
2007年3月1日の日本語教育新聞より
外国人の日本語研修術 1
カール・ロズボルトさん
非漢字系日本語学習者のための漢字学習法開発を目指す
プロフィール
1970年 ニューヨーク生まれ
1972年~1982年父の仕事で 欧州滞在(10年間)
1982年 帰国、デトロイト市へ移住。
1992年 ミシガン大学卒業(数学専攻)
1993年 初来日、日本語学習開始、広島県立向原高等学校で英語指導助手。
宮島町役場、三菱重工で併せて6年間広島滞在。
1998年 日本語能力試験一級合格
1999年~2006年 帰国
大学で日本語講師、通訳、日本領事館勤務。
2006年 4月2度目の来日。慶応義塾大学で日本語、日本語学、日本語教育を勉強。
将来の夢は非漢字系日本語学習者のため漢字学習課程を作成、普及
私が初めて日本に興味を持ったのは、ハワイ大学で六週間を過ごした時です。ハワイで初めて日本人の友達ができて、初めて寿司(すし)を食べました。ライシャワー元大使が書いた本『The Japanese Today』を読み、アメリカの生活にはない事をいろいろと考えさせられました。日本に来る数ヶ月前に日本語を勉強し始めてから十三年。今では日常生活では不自由なく日本語を使えるようになりました。これまで一人の外国人として、どうやって日本語を勉強したかについてお話したいと思います。
高校の英語指導助手に
大学卒業して一年後、文部省(現・文部科学省)と外務省が主催するJETプログラムに参加し、広島から単線で一時間半ほどの小さな町の高校で英語を教えるために、日本に来ました。英語を教えながら生活のために日本語を独学で勉強しました。
私が日本語を勉強した主な理由は三つあります。
第一に、日本に来た当初、日本語を話すことと読むことができなくて、とても不便でした。高校の同僚、日本人の英語の先生に聞けば、いろいろ助けてもらえたのですが……。日常生活で自立するため、日本語を勉強する必要がありました。
次に、日本語を覚えて帰国すると将来の就職に有利だと思っていました。
最後に、日本にいる間、学校や会社の同僚をはじめ、僧侶の人やひいお祖母(ばあ)さんまでいろいろな出会いがあって、相手の英語能力を問わず、たくさんの面白い話ができて、視野が広がるだろうと思いました。好奇心の強い私にとって、これこそが海外生活の喜びです。
日常生活の自立目標
日本に来た時点での私の日本語能力はほぼゼロでした。ある人に推奨されて、James Heisigの『Remembering the Kanji I』で、漢字の書き方と漢字の英語での意味を500文字ぐらい勉強して来たので、日本に来た時点で「赤」という文字は「red」という意味だということが分かりましたが、読み方は分かりませんでした。
大切な目標設定
日本ではたくさんの日本語のテキストを買いました。主に日本語能力試験の教材でした。日本語能力試験を合格することを目標にして勉強しました。日本語を勉強するために日本に来たわけではなかったので、勉強の方針は自分で決めなければなりませんでした。「日本語能力試験一級を合格する」という目標があって、勉強し続けられたものだと思います。私にとって、日本語の勉強の中で一番難しい事は「次に何を勉強すればよいのか」ということを決めることでした。
支えは好奇心と周囲の人びと
私はとても良い環境に恵まれました。家で教科書を使って勉強して、翌日職場で実践。そして職場にいる時、虎の巻のように、必ず電子辞書を携帯しました。日本語がある程度できるようになったら、たくさんの友達ができました。友達に私の間違った日本語を直すようにお願いしましたから、日常生活の中で正しい日本語を身につけることができました。
学習チャンスは生活の中に
それ以外にも、隣の町の公民館で実施していたボランティア日本語教室や広島国際センターの日本語教室に参加したりしました。それから、アニメや連続ドラマをビデオで収録し、再生して、分からない表現や単語があったら、一時停止して、電子辞書で調べて、ノートに書き留めました。面白いことをしながら勉強したのであまり苦痛に思いませんでした。
日本語能力試験一級に合格
一九九三年に日本に来て、日本に住みながら勉強し続けて、一九九八年にやっと日本語能力試験一級に合格しました。測定可能な目標があると、その目標にどれだけ近づいているかを数字で分かります。そういう意味でこの目標は大切だったと思います。そして、この様な試験に合格すると、他人に自分の日本語能力はどのレベルにあるのか、証明できるようになります。
漢字学習が不可欠
これから日本語を勉強しようとする人のための助言ですが、日本語をマスターするまでは長い道だということをよく意識してください。自分にとって、どんなコミュニケーションが大切かを決めて、目標を達成するための努力をしてください。日本にいるだけでは、日本語が自然に上手になるものではないので、テキストを使って勉強して、その勉強したものを周りにいる日本人と使えば、勉強したものがより身につくものだと思います。
日本に来て、早いうちに努力すれば、町に出るたびに復習ができます。そして勉強したものはより確実なものになります。基盤ができたら、日常生活の中に新しい単語や表現を習得する事ができます。
勉強する方法はたくさんあります。電子辞書は非常に便利なので使いこなせるようになったら上達は一層早くなると思います。漢字も早いうちに勉強し始めたら言葉と同じように、町の看板などで見たものは復習になります。
なぜ非漢字系日本語学習者のための漢字学習法開発をするのか
私は日本に来て、日本語を勉強したおかげでたくさんいい体験ができました。これから日本の社会はますます国際化する必要があると思います。日本人が外国語を勉強することも大事ですが、外国人も日本語を勉強することが非常に大事です。
非漢字圏の人で日本語を「マスター」するまで勉強をやり遂げる人はあいにく非常に少ないです。この問題の一大きな原因のーつは日本の表記システム。つまり漢字にあると思います。
学習できる時間と人生経験が異なるので、外国人の漢字の勉強は、日本人の子供が勉強する方法と違う方法が必要です。
一つひとつの漢字を勉強するだけでなくて、「漢字」という体系の特徴を勉強する必要があると思います。漢字をよく理解すれば、学術的な語彙(ごい)を習得するのも楽になりますし、漢字を忘れる防止にもなります。ですから、私はこれから、日本の国際化のために、この研究をし続けたいと思います。